ししとうししとう

(ナス科トウガラシ属)

生物種の英名
Sweet pepper,
"Shishito"
学名
Capsicum annuum
原産地
中南米

高知県が全国一の生産を誇るししとうは栄養価が高く、光沢のある緑色は料理に彩りを添え、炒める、焼く、揚げる等の料理に手軽に取り入れられる野菜です。ししとうは「甘唐辛子、スイートペッパー」と呼ばれ、普通は辛みのない野菜ですが、とうがらしの仲間特有の辛み成分カプサイシンを作る性質を持っています。カプサイシンには体内のエネルギー消費を促進して新陳代謝を活発にする効果があります。

ししとう

一次機能栄養

野菜の成分を見てみると…
野菜にはいろいろな栄養成分が含まれています!

文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」から引用

注目成分は、『β-カロテン』

ししとうには、体内でビタミンAに変化するβ-カロテンが多く含まれています。β‐カロテンには抗酸化作用、老化防止、美肌効果、免疫力向上等が期待できます。

トピック

ししとうにはほかの野菜と比べてビタミンB6が多く含まれています。ビタミンB6はたんぱく質を分解し吸収を助ける効果があり、たんぱく質不足は臓器、皮膚、爪、髪、体のあらゆるところに影響を及ぼすと言われています。たんぱく質の吸収を促すビタミンB6は、重要な栄養素と言えます。

二次機能美味しさ

ししとうの注目部分

「まろやかな辛み」
「一口サイズの野菜」
「ツヤのある緑」

新鮮なししとうの見分け方

表面にハリとツヤがあるもの。また、ヘタが弱っておらず切り口が変色していないものを選びましょう。

トピック

ししとうは鮮やかな緑色で加熱しても変色しにくいので、天ぷらの盛り合わせにもよく使われます。緑の色素は葉緑素(クロロフィル)で、独特の呈味を持っています。

調理のポイント

ししとうは「焼く」「煮る」「揚げる」など様々な調理法で食べることが出来る栄養価の高い野菜です。加熱調理の際には、空気の膨張による破裂を防ぐため、小さな穴を何箇所かあけると良いです。色と香りを生かすためには、加熱時間を短めにすることがお勧めです。



ししとうの辛み

とうがらしの一種のししとうには、辛み成分であるカプサイシン類がわずかに含まれていて、ししとうの食味のアクセントになっています。辛み成分が代謝を促進することは知られていますが、減塩効果や免疫力向上などの機能性を持つことも明らかになってきています。

  • 岩井和夫ほか (2008) トウガラシ 辛みの科学改訂増補版. 幸書房.

小ぶりなサイズ

ししとうは果実の長さが6~7cm、へたを合わせても10cm程度で収穫され、調理の際にはカットせずにそのまま使うことができる野菜です。果肉も薄く、また、ピーマンよりも柔らかいため、味がしみ込みやすい特徴があります。

  • 澤田博正ほか(2002) PMMoV(P1,2)抵抗性シシトウ‘土佐じしビューティー’の育成. 高知農技セ研報, 11, 45-51.

減塩効果

タンパク質の摂取量が少ない食事習慣では、塩分を欲しがるようになり、食塩の摂取量が増える傾向にあることが報告されています。しかし、辛み成分のカプサイシンを摂取することで、塩味を欲しがらなくなり、結果的に食塩の摂取量を抑えられることが実験で明らかになっています。

  • Kimura, S. et al (1988) Effect of capsaicin on body fat deposition. Diet and Obesty, Sci.Soc.Press, 219-227.

食品の保存性の向上

とうがらしには抗酸化性や抗菌性があるため、食品の保存性を高める食材として利用されてきました。たとえば、牛肉や豚肉と一緒に調理すると、抗酸化作用によって過酸化物質の生成を抑制し、保存性が高まることが明らかになっています。

  • 岩井和夫ほか (2008) トウガラシ 辛みの科学改訂増補版. 幸書房, 165.

細菌やカビへの抗菌作用

ししとうの辛み成分であるカプサイシンには抗菌作用があることが知られていますが、細菌やカビにも効果があることが報告されています。また、トウガラシ種子から抽出した成分が、ワイン酵母に対して高い抗菌性を示すことが明らかになっており、ワインの保存剤としても期待されています。

  • 矢嶋瑞夫ほか (1998) ワインから抽出した酸膜酵母に対するパプリカ種子抽出物の抗菌性. 醸造協会紙, 93, 671.

三次機能機能性

機能性 注目物質・概要・参考文献
  • 体熱産生・発汗
  • 抗炎症作用
カプサイシンには、新陳代謝を活発にさせる働きがあるため、体内のエネルギー代謝の促進、アドレナリン分泌の促進、発汗作用の促進などの効果が明らかになっています。
  • Strinvasan, K. (2016) Biological activities of red pepper (Capsicum annuum) and its pugent principle capsaicin:A review. Critic.Rev.Food Sci.Nut, 56(9), 1488-1500.
  • 堀江俊治ほか (2018) 消化管スパイスセンサーとその機能:辛味は胃腸でも味わう. 薬学雑誌 138(8),1003-1009.
  • 柳ほか (2008) 食品機能性の科学 (監修)西川研次郎. (株)産業技術サービスセンター.
  • 抗酸化作用
ビタミンCアスコルビン酸)には、からだの免疫機能を高め、疲労を回復してくれる効果や効能があるため、風邪予防や、夏バテ防止が期待できます。また、細胞の老化を防ぐ効果(抗酸化作用)も明らかになっています。
  • Antonius, G.A. et al (2006) Antioxdant in hot pepper: Variation among accessions. J.Environ.Sci.Health, 41(7).
フラボノイド類ルテオリン)はポリフェノールの一種の植物色素で、抗酸化作用、デトックス作用、アンチエイジング作用、ストレス緩和、免疫力維持、血液をサラサラにするなどの生理調整機能に働きかけることがわかっています。
  • Lee, Y. et al (1995) Flabonoids and antioxidant activity of fresh pepper (Capsicum annuum) cultivers. J.Food Sci., 60(3).

*野菜の表記について
このページでは野菜名はひらがな表記、品種名はカタカナ表記としています。また、論文に関係する部分は、論文中で使われている表記にしています。